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Ⅶ 家賃滞納の場合に賃借人を立ち退かせる方法

コロナ後の世界となり、社会保険料や借入金の返済が始まり、賃料滞納が増えてきています。

 

賃料を何か月も滞納された場合、賃貸人は立ち退きを要求することになりますが、法律上、自力救済(自分で無理やり追い出すこと)は禁止されていますので、まずは話し合いをして、話し合いに応じてくれなければ訴訟を提起するという流れになります。

1 賃料滞納は早めの対応が大切

長年の付き合いのある賃借人から「もうすぐお金が入るので、あと1か月待ってください。」と言われてしまうと、賃貸人としては出て行けとも言いづらくなってしまいます。弁護士に明渡しを依頼するにしても費用がかかるし、そもそも知り合いに弁護士がいないということで、ズルズルと賃料滞納状況が続いてしまうことが多々あります。

 

気が付けば、賃料の支払いを得られないまま、何ヵ月も経っていたということになし、賃借人が自主的に出て行ったとしても、結局賃料を回収できないという結果が待っています。賃借人が借入をしていたような場合には、その返済に困るという事態にもなってしまいます。

 

これを防ぐためには、早急に手を打つことが大切です。多少の費用がかかっても、傷口が大きくなる前に、弁護士に依頼し、明渡しの交渉をしてもらい、交渉に応じない場合には立ち退き訴訟の提起をしてもらうのがよいでしょう。

2 弁護士に依頼しても、交渉がまとまらない場合には、立ち退き訴訟を提起してもらう

弁護士に依頼していただければ、まずは、賃料を督促し、支払えない場合には立ち退きを要求する趣旨の内容証明郵便による催告書を、滞納している賃借人に送付してもらえます。それでも、賃借人から、芳しい反応がない場合、訴訟を提起してもらえます。

 

何か月もの滞納が生じていれば、当然勝訴判決が得られますので、それを以て立ち退きの強制執行をしてもらうことができます。

 

問題は、それにかかる時間と費用です。

 

第一段階の内容証明郵便の発送は、すぐにできますが、その回答を待つには、約1か月程度の時間がかかります。

 

これで、賃借人が賃料を支払ってくれば、とりあえず問題は解決します。賃料を支払わず、立ち退きもしないという場合には、明渡(立ち退き)の訴訟を提起することになります。

 

この第2段階の訴訟提起の準備には、約1か月がかかり、その後、裁判所で約1か月後に弁論期日がセットされ、相互の主張、反論が展開されて、判決に至ります。

 

賃料を数か月滞納しているような場合には、賃借人から何も反論がない場合が多いので、初回期日から2週間程で判決が出ます。つまり、裁判には、準備から判決まで約3か月の時間がかかります。

 

その後2週間以内に控訴がなければ判決が確定しますので、強制執行の手続に移ります。ますは、判決送達証明書、執行文の付与を裁判所にしてもらい、明渡しの強制執行を申し立てます。裁判所の執行官が明渡催告をし、それから1か月程度で明渡の強制執行が行われます。申し立ててから強制執行が実行されるまでは、2か月ほどかかります。

 

ざっくりと言えば、合計で大体6か月の時間がかかります。相手が裁判の中で反論してきたり、最初に内容証明郵便による催告書を出した後に、相互に和解交渉をするような場合には、さらに時間がかかってくることになります。

 

 最初に内容証明郵便による催告書を出してから、物事は進行していきますので、早く始めれば、早く終わることになります。

3 弁護士を使った早めの対応が大切

以上に述べてきました通り、建物の明渡しは、話し合いによる解決ができず、訴訟→強制執行までいってしまいますと、かなりの費用と時間がかかってしまいます。

 

このような事態を避けるためには、早い段階から、弁護士を介入させ、話し合いによる解決を図ることが得策です。

 

そのためには、弁護士名義で内容証明郵便での催告書を送付することで、賃借人に強く注意喚起させ、真摯な対応を求めていくことが必要です。目安としては賃料の支払が2,3回滞ったら、弁護士の名義による催告書の送付を検討しましょう。

 

それにより、賃借人が未払いの賃料を支払えばそれでよいですし、支払ができない場合に、より安い賃料の場所に引越を検討して自主的に退去するのであれば、わざわざ訴訟を提起して明渡しを求める必要性は無くなります。

 

 青山東京法律事務所は、不動産会社のクライアントを抱え、明渡請求訴訟での経験を積んでいますので、弁護士をお探しの折は、その候補の一つとして、お気軽にお尋ねください。

監修者

植田統

植田 統

1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。

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