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Ⅰ 株主総会とは

毎年6月末になると、多くの上場会社で株主総会が開かれ、それがニュースの話題として取り上げられます。昨今では、物言う株主が増えてきて、株主総会で会社側の提案した取締役の選任に反対したり、物言う株主側から提案された取締役が選任されたりと、会社の支配をめぐって、丁々発止の議論が展開されています。
ここでは、株主総会が会社の最高の意思決定機関であるという点に焦点をあて、そこでどのような決議が行わるかを見ていきたいと思います。

Ⅰ 株主総会とは

株主総会とは株式会社における最高意思決定機関です。会社のオーナーである株主が議決権を行使し、重要な意思決定を行う場です。
中小企業では、代表取締役社長が創業者で100%株主であるケースも多く、代表取締役社長の一存ですべてが決まります。
一方、上場企業などでは、外部株主が入ってきますので、決議にはその意向が反映されることになります。

Ⅱ 株主総会の種類

株主総会には、定時株主総会と臨時株主総会があります。

(1)定時株主総会

定時株主総会とは、毎年定期的に開催する株主総会です。
会社法では、「定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」と規定されています(会社法296条1項)。
多くの日本企業は決算月を3月に設定していることから、事業年度を終えて計算書類が出そろった6月末に定時株主総会が集中する傾向にあります。
なお、事業年度は必ずしも1年である必要はなく、法令上は半年を一事業年度とすることも可能です。
一方で、1年を超える期間を一事業年度とすることはできないとされていることから、少なくとも1年に1回は定時株主総会が開かれることとなります(会社計算規則59条2項)。
定時株主総会では、事業報告や決算承認、剰余金の配当などが議題となることが多いですが、それ以外に役員の選任や役員の報酬決定などが議題となることもあります。

(2)臨時株主総会

臨時株主総会とは、定時株主総会以外の時期に開催される株主総会です。
会社法では、「株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる」と規定されています(会社法296条2項)。
株主総会で決議したい事項によっては、次回の定時株主総会を待ってはいられない場合もあります。その場合は、臨時株主総会を招集することとなります。

Ⅲ 株主総会での決議事項と報告事項

株主総会には決議事項のほかに報告事項が存在します。
決議事項とは、文字どおり、株主総会での承認決議が必要となる事項です。
一方、報告事項は報告が必要なだけであり、株主総会による承認決議は必要ありません。
会社法では、株主総会での報告事項として、次の2つが定められています。
事業報告(同438条3項)
計算書類(同439条、438条2項)
ただし、このうち「計算書類」が報告事項となるのは、次の要件をすべて満たした場合に限られます。
・取締役会設置会社であること
・会計監査人設置会社であること
・次の2つを満たす適正な計算書類であること
-会計監査報告と監査役の監査報告の内容に問題がないこと
-計算書類が監査報告の通知報告期限を過ぎて監査を受けたものではないこと
これらの要件を満たさない場合、計算書類は決議事項となり、株主総会での承認が必要となります(同438条2項、439条)。

Ⅳ 株主総会決議の3つの種類

株主総会の決議には、3つの種類があります。

①普通決議

普通決議とは、株主総会における基本の決議方法です。
普通決議は、行使可能議決権の過半数を有する株主が出席し(定款で排除可能)、出席した株主の議決権のうち、過半数が賛成することを満たした場合に成立します(同309条1項)。

②特別決議

特別決議とは、株主にとって重大な事項の決議に適用される決議方法です。
特別決議は、行使可能議決権の過半数を有する株主が出席し(定款の定めで、「3分の1以上」にまで緩和可能)、出席した株主の議決権のうち、3分の2以上が賛成すること(定款の定めで、加重可能)の要件を満たした場合に成立します(同309条2項)。

③特殊決議

特殊決議とは、株主にとって重要性がきわめて高い事項に適用される決議方法です。
特殊決議には、次の2つが存在します。

309条3項の特殊決議

議決権を行使できる株主の半数以上(定款の定めで、加重可能)、かつ、当該株主の議決権の3分の2以上が賛成すること(定款の定めで、加重可能)で成立します(同309条3項)。

309条4項の特殊決議

総株主の半数以上(定款の定めで、加重可能)、かつ、総株主の議決権の4分の3以上が賛成すること(定款の定めで、加重可能)で成立します(同309条4項)。

Ⅴ 株主総会の決議事項

株主総会では、法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができます。株主総会は会社の最高意思決定機関ですから、会社に関するすべての事項について決議権限があるということです。
しかし、取締役会がある場合は株主総会の権限がやや縮小され、株主総会の決議事項は次のものとなります(同2項)。
・会社法で規定された事項
・定款で定めた事項
株主総会で大まかに何を決めるかについては、次の3つに分けられます。

(1)会社の根本に関わる事項

例えば、定款の変更、事業譲渡、合併等の組織再編行為、解散等がこれに当たります。
定款は、会社の憲法に相当するもので、その変更は会社の根本に関わる事項ですので株主総会での決議が必要になっているのです。また、事業譲渡、合併、解散等も、会社の組織形態を大きく変える事項ですので、株主総会での決議が必要になってきます。

(2)会社の役員の人事に関する事項

株式会社は、制度上所有者と経営者が分離しています。株式会社を所有しているのは株主ですが、株主は会社経営には当たらず、経営者である取締役とその業務執行を見守る監査役を株主総会で選ぶことで経営を委任しているという関係にあります。
もちろん、選任だけでなく、解任することもできます。

(3)株主の利害に大きく影響を与える事項

剰余金の配当や役員の報酬等がこれに当たります。剰余金の配当に関する事項や役員の報酬についての決定を役員に任せてしまうと、不当に高額な役員報酬や不当に低い配当金が決定されてしまうおそれがあります(これを一般的に「お手盛り」といいます)。

Ⅵ まとめ

以上見てきたように、株主総会は会社の最高意思決定機関として、重要な事項について決議を行います。取締役会がない会社では、会社に関するすべての事項を株主総会で決定することとなりますが。取締役会がある場合には、会社法で規定された事項と定款で定めた事項が、株主総会の決議事項となることに注意しておきましょう。
株主総会の決議には普通決議と特別決議、特殊決議が存在するため、どのような事項についてどの決議が必要となるかも理解しておきましょう。
株主総会の運営の仕方に迷われた方は、是非青山東京法律事務所へお尋ねください。

監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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