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相続・遺産分割-公正証書遺言の作り方

公正証書遺言とは、公証役場に出向いて、公証人に作成してもらうものです。 

公証人は、多くが、裁判官や検察官のOBですので、法律的な専門知識を持っています。ですから、公証役場で作った遺言、つまり、公正証書遺言は、自筆証書遺言のような裁判所での検認という手続きを要せず、すぐに遺言執行をしてもらうことができるというメリットあります。 

 

また、公証人という法律の専門家に作成してもらっていますので、自ら独自に作成できてしまう自筆証書遺言とは違い、内容のチェックが厳格に行われていますので、無効になる可能性は小さくなっています。 

 

このように公正証書遺言は自筆証書遺言よりも、より正式な遺言ですが、公証人に支払う手数料がかかるというデメリットがあります。公正証書遺言といっても、法律知識のない方がいきなり公証役場に行って作成するのは難しいので、弁護士に委任し、遺言案を作成してもらってから最後の作成だけを公証人にお願いする場合が多いので、弁護士費用と公証人の費用が二重にかかるというのが実態です。 

 

公正証書遺言を作成、保管する手順は以下の通りです。 

 

1) 弁護士に依頼し公正証書遺言作成に向けての調査を開始する 

戸籍を取り寄せて相続人を確定させ、財産目録を作成し、その分け方を相談する。遺産の分け方は、相続税の多寡にも影響してきますので、税務知識のある弁護士に依頼する。 

 

2) 公証人と原案を作成する 

原案ができた時点で、弁護士がいつもお願いしている公証人にそれを送付し、その公証人の書式で公正証書遺言案を作成してもらう。この時、公証人から相続人、財産内容について質問が入ることもあり、また、公証人によって遺言のスタイルが多少違う。 

 

3) 遺言書作成のアポを取る 

原案が決まった時点で、弁護士経由アポを入れてもらう。公正証書遺言には、2名の証人が必要なので、用意できない場合には、公証役場に有料で手配してもらう。 

 

4) 公証役場で遺言書作成 

 

事前の打ち合わせによって決定した遺言が準備されていますので、公証人は、その内容を読み上げ、本人と証人に確認してもらいます。間違いがなければ、本人および証人2名が署名捺印をして遺言書が完成します。 

 

公証役場への訪問が困難であれば、自宅や病院、介護施設などで作成することもできますが、別途、公証人の交通費や日当がかかります。 

 

5) 公正証書遺言の保管方法 

公正証書遺言には原本とその写しである正本、謄本があります。原本は公証役場に保管されます。正本と謄本は本人に交付されますが、正本は原本と同等の効力をもつため、大切に保管しなければなりません。 

 

自宅で保管する、貸金庫で保管することもできますが、公正証書遺言の中で、遺言執行者として弁護士を指定している場合には、その弁護士に保管してもらうのがいいでしょう。 

 

その場合は、相続が開始されてすぐにその弁護士に連絡がいくようにしておかなければなりませんので、身近にいらっしゃる人に連絡先を伝えておいてください。 

監修者

植田統

植田 統

1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。

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