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Ⅳ 株主総会開催請求

株主間の支配権争いの典型的なケースは、親が代表取締役となっているが、子が親から過半数株式の譲渡を受けていた。しかし、親子関係が悪化し、親が子を追い出そうとしているという場合です。

多くの会社では3名以上の取締役が選任されていますが、取締役3名だとすれば、親、親の配偶者、子という構成になっていることが多いものです。親の配偶者が子の肩をもってくれれば話は別ですが、そうでない場合、取締役会で親を代表取締役から解任することは難しい状況です。

となると、株主総会で親を取締役から解任することで決着をつけるしかありません。そこで、どちらが過半数の株式を押さえているかが問題となります。

親は子へ譲渡した株式が名義株だと主張してくるので、子としては自分に株式が譲渡されていることを認めてもらうために、まずは株主権確認請求を裁判所へ提起します。そこで、自分が過半数株式を所有していることが確認されたとしても、親を代表取締役から解任し、自分が代表取締役に就任しない限り、親の動きを止めることはできません。

株主総会は、取締役会の決議に基づき、代表取締役が招集すると定款で定められていることが多いので、子は株主総会の招集ができません。そこで、子が株主総会開催を裁判所へ請求することが必要になってきます。

Ⅰ 株主総会招集請求の要件

株主総会の招集を請求することができるのは、総株主の議決権の100分の3以上となる議決権(議決権数要件)を6か月前から引き続き有する株主です。議決権数要件および保有期間要件については、定款で法定の要件を下回る議決権割合・保有期間を定めることも可能ですが、株式に譲渡制限のついた非公開会社では保有期間要件はありません。

議決権数要件は、招集請求の時に充たしている必要があり、裁判所の許可を得て、少数株主が株主総会を招集する場合は、株主総会の終結時まで充たしていることが必要だとされています。複数の株主が有する議決権を合算することによって議決権数要件を充たすことも可能です。

上記の行使要件を満たす株主は、株主総会の目的である事項および招集の理由を示して株主総会を招集することができますが、条文上書面で示すことは要求されていませんので、口頭で請求することも可能です。

Ⅱ 招集請求に基づく株主総会の招集

少数株主による招集請求を受け、会社が株主総会を開催する場合は、通常どおり会社法で定められている株主総会招集の手続を履践する必要があります。すなわち、取締役会設置会社においては、株主総会の招集について取締役会決議を経る必要があります。

Ⅲ 裁判所による株主総会招集の許可

会社が株主総会を開催しない場合、株主は裁判所の許可を得て、自ら株主総会を招集することができます。

① 取締役が株主による株主総会の招集請求後遅滞なく招集の手続を行わなかった場合

② 株主による株主総会の招集請求があった日から8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集通知が発せられない場合

裁判所は、株主による株主総会の招集請求が要件を充たしている場合には、申立てを許可しなければなりませんが、申立てが権利濫用と認められる場合には、申立てを却下することができます。

ただし、重要な事項に関する意思決定は株主総会でなされるべきですから、株主総会の招集請求自体が権利濫用であると判断される場合は限定されることとなります。以下の2つの要件を満たす場合に、権利濫用と認定されることになります。

客観的要件:株主総会を招集することに実益がないばかりか、かえって有害である場合

主観的要件:申立人に害意(会社の信用を害し、取締役を困惑させることについての故意)がある場合

Ⅳ 裁判所による許可後の手続

裁判所の許可決定を得た株主は、自ら株主総会を招集することができます。

許可決定を得た株主は、自ら開催場所を用意し、期日を指定して、他の株主に向けて、招集通知を発送します。その招集通知には、株主総会で決議する議題が書かれていなければなりません。

この場合、株主総会の議長については、定款で定めた会社関係者ではなく、株主総会で選任された者となりますので、開催当日には、まず議長の選任を行い、その後、議題についての決議を行っていくことになります。普通決議で足りるか、特別決議の必要があるかについては、会社法の定めに従うことになります。

株主総会が終わったら、株主総会議事録を作成し、取締役の選任、解任等が行われた場合には、必要な登記手続を会社が進めていくことになります。

Ⅴ 青山東京法律事務所の経験

青山東京法律事務所では、株主総会開催許可の申立て後、株主総会招集、決議、登記までを行った経験があります。幸いなことに、青山東京法律事務所のクライアントが過半数を持つ株主でしたので、敵対する取締役を解任する議決が通り、抹消登記まで順調に進めることができました。

会社支配権の争い等で、株主総会開催許可から株主総会決議までの一連の手続を進めたいと考えている方がいらっしゃいましたら、是非青山東京法律事務所へお問い合わせください。

監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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