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会社及び代表者破産手続きの進め方
会社が債務超過や支払不能となってこのままでは負債を支払えない状態になったとき、そのときの手持ち資産によって負債を可能な限り支払い、清算を行うことを破産といいます。法人が破産すると、法人そのものが消滅するため、債務が免除されることになります。
目次
Ⅰ 会社破産手続きの流れ
会社破産の手続きの流れとしては、まず会社は、裁判所に対する破産申し立てをしてもらう弁護士を選任します。申し立ては、代表者本人で行うことも不可能というわけではありませんが、複雑な手続きが多いことから、弁護士に依頼するのが一般的です。
依頼を受けた弁護士は、会社の債権、債務状況を調査して、債務超過や支払い不能の状態にあるかを判断し、確かに債務超過である、支払い不能であると判断しときに、破産申し立てに向けて準備を開始します。
(1)受任通知の発送
弁護士が行う第一のステップは、債権者に対する受任通知の発送です。受任通知とは、会社が支払不能に陥ったので、債務整理に向けて弁護士が依頼を受けましたということをお知らせする通知で、これによって会社は支払い不能に陥ったことを宣言することととなり、それ以降、会社による自由な財産処分は制限されることになります。
その一方で、受任通知発送以降は、弁護士が前面にたって債務整理をしていくことになりますので、代表者や会社に対する取り立ては終わり、代表者はうるさい取り立てから解放されるというメリットがあります。
(2)会社の債権債務関係の調査
弁護士は、受任通知を発送以降、会社の債権債務関係、資産内容等をさらに綿密に調査し、その調査が終了すると、裁判所へ必要書類を取り揃えて破産申し立てをすることになります。受任通知を送ってから裁判所へ破産申し立てをするまでの期間は、概ね1~3か月といったところです。
(3)裁判所への破産申立て
裁判所に破産を申し立てると、裁判所により破産管財人が任命されます。破産管財人には、その裁判所の管轄地の弁護士が選ばれます。この後は、破産管財人の下で破産手続きが進められていきます。具体的には、破産管財人が申し立て代理人の弁護士が提出した書類を細かく検討して、破産会社の債権債務関係を確定し、財産を換価していくことになります。
(4)債権者集会~終結まで
破産管財人選任後の手続きとしては、約3か月後に第一回債権者集会が設定され、債権者が参加することができる場で、破産会社の債権債務関係、資産内容などについての報告が行われます。この時までに、財産の換価が終わっているが、債権者への配当を行えるほどの財産もなく、それ以外に調査を要するような問題が残っていなければ、そのまま破産手続きが終了します。私のこれまでの経験からすると、7,8割のケースはこれにあたります。
残りの2,3割のケースでは、第二回、第三回と債権者集会が積み重なっていくのですが、それは不動産の売却が終わらないとか、破産会社の使途不明金がある等の場合です。
Ⅱ 会社代表者の破産手続
ここまでが破産会社についてでしたが、代表者個人について、以下に述べていきます。
多くの破産会社の代表者は、会社の債務について連帯保証をしていますので、代表者も会社と同時に破産手続をとることになります。破産手続きの進み方は、上に述べてきた破産会社と同じです。
会社と違いがあるのは、代表者個人には生活があるので、一定金額の財産が自由財産として残されることです。東京地裁の場合には、代表者が破産をする時点で99万円までの現金と預金等を20万円までを手元に残すことができることになっています。
破産手続が終わると、代表者個人の債務は基本的には免責されるので、破産前に負っていた債務を返済する必要はなくなりますが、所得税、住民税などの税金と社会保険料は、破産した後にも返済すべき債務として残ります。
代表者個人が破産をすると、官報には掲載されますが、戸籍や住民票に破産が記載されることはなく、周囲の人に簡単に破産した事実が知られることはありません。ただし、金融機関やクレジット会社などは、官報をみて、信用情報を蓄積していますので、ローンやクレジットの審査に通らない状態となります。
Ⅲ 会社の従業員への影響
従業員については、会社が消滅するのですから、職を失うことになります。未払い賃金や退職金の支払いについては、法律上の優先権がありますので、その分の資金が会社にのこっていれば、優先的に支払いが行われます。
Ⅳ 会社破産の費用
会社破産の場合、代表者の方が心配されることは、破産手続き費用を支払うことができるのかという点です。
裁判所等が公表している破産手続きの予納金(破産管財人の報酬にあてられる)は、かなり高額で、東京地裁の場合、負債総額が5000万円以上1億円未満の場合には100万円、1億円以上5億円未満の場合には200万円、5億円以上10億円未満の場合には300万円とされています。
破産会社は、これに加えて、破産申し立てを行う弁護士の費用を負担しなければなりませんが、多くの場合、この予納金と同額程度を請求されます。この結果、破産を考えている会社の多くは、高額な費用が捻出できないという理由で、破産をやめてしまいます。
しかし、東京、大阪、横浜等の大都市圏の裁判所では、少額管財事件という安い費用で破産手続きを進められる類型が設けられています。債権者数が膨大な数にのぼる等の例外的なケースでは利用できませんが、多くの破産会社で少額管財の利用が可能です。手続きは簡略化されており、破産管財人にかかる負担が少ない代わりに、予納金は20万円と大変リーズナブルな金額に設定されています。
破産管財人の負担が少ない代わりに、破産申し立て代理人となる弁護士の負担が重くなるのですが、予納金も含めて100万円程度の資金があれば、破産することが可能です。この費用には、代表者個人の破産手続き費用も含まれています。
それでも、すぐに100万円をねん出することは難しいと思われる経営者の方が多いのではないかと思います。しかし、営業を継続している会社であれば、あまり心配しなくても大丈夫です。なぜなら、破産申し立て代理人の弁護士が受任通知を出すと資金の支払いは一切停止するのに対し、入金は止まらないからです。会社が支払い停止となっても、会社の債務者である売掛先は、債務を支払う義務があり、月末になれば、売掛金を入金してくるからです。ですから、今手元に資金がなくても、来月末、再来月末に売掛先からの資金を回収すれば、破産費用は支払えるようになります。
もし、費用の捻出に自信のないという経営者の方がいらしたら、是非弁護士に相談してみることをお勧めします。
Ⅴ 破産を考えている経営者の方は是非青山東京法律事務所へご相談ください
破産する会社では、最後まで資金繰りをつけようとして、資産を処分したり、代表者の友人から借入を起こしたりして、会社の資金の出し入れが説明できないような状態になっているケースが多く、裁判所へ申し立てる前に、十分な調査を行って、管財人から聞かれるであろう質問に対して、的確に答えることができるように準備をしておくことが大切です。この準備が不十分で管財人から不信感を持たれてしまうと、せっかく破産を申し立てても、スムーズに手続が進まないようになります。
青山東京法律事務所では、これまでに多数の会社及び代表者の破産事件を取り扱ってきましたので、勘所を心得ています。
会社の経営に行き詰まり、一旦今の会社を整理して、心機一転出直そうと考えている方は、是非青山東京法律事務所へご相談下さい。
監修者

植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士
東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。
野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。
米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。
2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。