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中小企業に顧問弁護士が必要な理由
日頃、弁護士として仕事をしていて感じるのは、中小企業の皆さんの中に顧問弁護士契約をしている会社が少ないことです。
毎年、会計処理をして決算書を作成し、税務申告をしなければならないので、顧問税理士は必ずいるのですが、顧問弁護士となると、そこまで法律的問題は起こらないし、起きた時に、誰かに弁護を頼めばいいだろうということで、契約していない会社が非常に多いのです。
では、なぜ、中小企業は顧問弁護士契約が必要なのでしょうか。
目次
1. 中小企業に顧問弁護士契約が必要な理由
中小企業の多くは、うちにはそんなに深刻な法律問題はない、毎月顧問料を支払うのは無駄だと考えているところが多いように思います。
しかし、昨今は、中小企業は多くの法律問題にさらされています。
例えば、労働問題ですが、セクハラ・パワハラで会社が訴えられる場合が増えています。セクハラ・パワハラの結果、労働者が適応障害に陥れば、休職をすることになり、仕事が滞ります。また、会社の責任であると認められれば、慰謝料を支払う必要も出てきます。
この他にも、退職した労働者から、不当解雇で訴えられる、残業代請求をされるという場合があります。
さらに、取引先との代金をめぐるトラブルも頻発しています。契約不適合を理由とする代金の減額、元請けの指示による変更があったことを理由とする代金の増額請求等です。
また、2024年に入ってからは、コロナ借入の返済が始まったこともあり、突然取引先が倒産してしまい、下請工事ができなくなった、商品供給がストップしたというケースも起こっています。
こうした問題が起こるのを、事前に避けるためには、ちょっと危ないかなと思ったときに、顧問弁護士に相談し、どのように対応すべきかを聞いておくことが大切です。
1-1 労働問題を防ぐため
例えば、暴言を吐いたり、昼間どこへ行って何をしているのかわからない従業員がいるが、何度注意しても直さないので、経営者が、いずれ退職してもらうしかないなと思っているとします。どのようにして諭旨退職、懲戒解雇まで持っていくべきかを、顧問弁護士とよく相談しておく必要があります。
なぜなら、法律が要求する退職、解雇への手続きは厳格だからです。
経営者の目から見れば、その従業員が明白に勤務態度不良、職務命令違反と見えても、退職、解雇まで持っていくとなると、法律的には、証拠の積み上げが必要なのです。
どのような勤務態度をとっていたのか、どのような暴言があったのかを、日時を特定して逐次記録していく、できれば録音録画等も行っていく。その上で、ウォーニングレターを作成し、上記記録を書いた上で、1か月後までに改善を求め、指導を行う。
1か月後に再度レビューし、問題が解消されていない場合には、2回目のウォーニングレターを出し、再び指導を行う。それでも、従業員の勤務態度に改善が見られない場合、就業規則に基づく手続きを経て、諭旨退職、懲戒解雇を決定する。
こうした手続きをとっておかないと、従業員から後日訴訟を起こされた場合、会社が負けてしまう可能性があります。
1-2 取引先とのトラブルを防ぐため
もう一つ例をあげて説明しましょう。
今度は、取引先から支払いがなされなかったときです。
多くの場合、長年の取引関係だから、電話で催促してみたが、「来月には支払う」と言ってきたので、もう一月待ってみようとなるのですが、一度資金繰りが悪化した取引先は、経営を立て直すことはできず、現実には、翌月も支払ってこないし、翌々月になっても支払ってこないのです。
結果的に、“長年の取引関係”を重視したことが仇となって、売掛金がどんどん膨れ上がってしまう。そして、突然、取引先から破産の通知が届き、それまでに積みあがってきた売掛金が全部不良債権になってしまうのです。
経営者としては、長年の取引関係があると言っても、支払いが遅れ始めた時には、顧問弁護士からアドバイスを受け、取引先から担保を取る、担保に同意してもらえない場合には、商品の供給をストップする等の対応を取ることが必要です。
また、事態が深刻なものであると思えば、顧問弁護士に頼んで、取引先の不動産、預金等へ仮差押えをしてもらうことも必要でしょう。
このように、顧問弁護士がいれば、経営者はすぐに対応を起こすことが可能となり、経営に対するダメージを最小限に留めることが可能となるのです。
2. 顧問弁護士が必要となるタイミング
では、中小企業は、どのようなタイミングで顧問弁護士と契約を結ぶべきなのでしょうか。1で例をしてあげたような、労働問題が出てきそうになったとき、取引先との問題が起こったときに、契約すればいいのでしょうか。
当事務所としては、それまで待つのではなく、もっと早い時点で契約されることをお勧めしています。
会社は業務を開始すれば、労働者を採用しますし、取引先を契約をします。その時から、顧問弁護士に相談しておくことが中小企業の法的リスクを削減するために必要だと考えているからです。
次の3で述べますが、顧問弁護士と契約しても、その費用は労働者を一人雇うよりも安いのですから、法務担当者-それも弁護士資格を持った人-を雇ったと思って、会社が業務を開始し、ある程度事業が軌道に乗ってきたら、顧問弁護士契約をするべきです。
3. 当事務所の顧問弁護士費用
顧問契約は、月額の固定報酬で契約が結ばれます。
月額の固定報酬は、顧問弁護士表示、簡単な契約書のレビュー、電話やメールでの法律相談をカバーするものです。尚、トラブルの相手方との本格的な交渉、訴訟提起等は、顧問契約には含まれません。
当事務所においては、以下複数の顧問契約を用意しています。
5万円コース | 弁護士の執務時間2時間まで
(顧問弁護士表示、簡単な契約書レビュー2本、電話・メール相談2本、着手金割引10%) |
10万円コース | 弁護士の執務時間4時間まで
(顧問弁護士表示、簡単な契約書レビュー4本、電話・メール相談2~4本、着手金割引20%、3営業日以内の対応) |
20万円コース | 弁護士の執務時間8時間まで
(顧問弁護士表示、簡単な契約書レビュー8本、電話・メール相談4~8本、着手金割引30%、2営業日以内の対応) |
当事務所では、顧問先の経営者の方から、法務だけでなく、経営へのアドバイスを含めて頻繁に相談をいただくことが多いので、10万円コースを基本としていますが、どれだけ法的サービスを必要するかによって、最適なプランを選択していただければよいと思います。
監修者
植田 統
1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。