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顧問弁護士契約と弁護士(スポット契約)との違いを解説
「顧問弁護士と聞くが、契約するメリットがわからない」
「定額で費用が発生するのは、もったいないと感じてしまう」
といった形で、顧問弁護士、顧問契約のメリットや契約するべき理由についてイメージがわいてこない経営者の方は多いと思います。
日本弁護士連合会が行ったアンケートにおいて、実際に年商1億円以下の中小企業の79.6%が相談できる弁護士がいない、と回答しています。相談できる弁護士と、必ず顧問契約を結んでいるわけではないので、顧問弁護士がいない中小企業の割合はもっと高いと言えるでしょう。
本記事では、企業経営において大きなメリットがある顧問弁護士、顧問契約について、スポット契約との違いも含め解説します。
顧問弁護士、顧問契約をするか否かの判断の一助になれるような情報を以下に提供します。
目次
顧問弁護士とは?
そもそもよく耳にする顧問弁護士とは一体どういう存在なのでしょうか。
顧問弁護士とは、その役割
顧問弁護士とは、月額の固定報酬を支払うと、その範囲内で、日常的な法律相談や契約書のチェックなどをしてくれる弁護士のことです。
企業経営者は、経営をしていく中で、勤務態度の悪い従業員をどう処遇したらよいのか、納期を守らない取引先との契約を見直すべきか、支払いの遅れる取引先にどう対応したらいいのか、新規取引先と新たに契約を締結するが、相手方から提示された契約書にサインしてしまっても大丈夫なのか、など多くの法律問題に直面します。
こうした時に、電話一本で相談できるのが、顧問弁護士です。問題が深刻なものとなる前に相談しておくことによって、問題が拡大するのを防ぐことができます。
また顧問弁護士は、自社と長期的にお付き合いすることになるので「自社のビジネス」「経営者の考え方」などを十分に理解して対応してくれます。
弁護士というと、法律的観点から杓子定規に、良い、悪いを判断してしまうのではないかと危惧をされている方が多いと思いますが、顧問弁護士なら、自社のビジネスの特徴、経営者の考え方を十分に考慮した上で、法律面ばかりでなく、ビジネス面から見ても、ベストな選択肢を提示してもらえます。
顧問契約の種類と内容
顧問契約は、月額の固定報酬で契約が結ばれます。
月額の固定報酬は、顧問弁護士表示、簡単な契約書のレビュー、電話やメールでの法律相談をカバーするものです。尚、トラブルの相手方との本格的な交渉、訴訟提起等は、顧問契約には含まれません。
当事務所においては、以下複数の顧問契約を用意しています。
5万円コース | 弁護士の執務時間2時間まで
(顧問弁護士表示、簡単な契約書レビュー2本、電話・メール相談2本、着手金割引10%) |
10万円コース | 弁護士の執務時間4時間まで
(顧問弁護士表示、簡単な契約書レビュー4本、電話・メール相談2~4本、着手金割引20%、3営業日以内の対応) |
20万円コース | 弁護士の執務時間8時間まで
(顧問弁護士表示、簡単な契約書レビュー8本、電話・メール相談4~8本、着手金割引30%、2営業日以内の対応) |
当事務所では、顧問先の経営者の方から、頻繁に相談をいただくことが多いので、10万円コースを基本としていますが、どれだけ法的サービスを必要するかによって、最適なプランを選択していただければよいと思います。
顧問契約とスポット契約の違い
顧問弁護士の契約を検討している方が、よく疑問に思われる「顧問契約」と「スポット契約」の違いについて解説いたします。
ここでは、企業法務においてスポットで案件を依頼することと、顧問契約で依頼することの違いに焦点を当ててご紹介します。
以下は、同じ弁護士が対応した場合、顧問契約とスポット契約でどのような違いが出てくるのかを紹介します。
顧問契約 | スポット契約 | |
費用 | 月額顧問料が発生する。
多ければ多いほど、顧問契約の方がコストは安くなる。 訴訟の場合、着手金の割引が受けられる。 |
月額費用は発生しない。
しかし、法律相談であっても個別案件が生じた場合の費用は、高くなる。 |
対応スピード | 電話一本で相談できる。
自社のビジネスを理解してくれているので、回答が早い。 |
弁護士を探すところからスタートするため、初動が遅れる。
自社のビジネスを説明するところから始まるので、コミュニケーションに時間がかかる。 |
成果物の質 | 自社のビジネス、経営者の考え方を理解してくれているので、ビジネス面から適切な対応をしてもらえる。 | 自社のビジネスと経営者の考え方の理解不足から、自社に適した解決策の提示というよりも、一般的な解決策にとどまる場合が多い。 |
これを見ていただくとわかるように、顧問料がもったいないからとスポットで依頼することを繰り返すのは、かえって費用的にも高くつく可能性が高いだけでなく、得られるアドバイスの質も低下することになります。
顧問契約をするメリット
顧問契約をするメリットについて、簡単に説明してきましたが、本セクションではより深掘りして紹介します。
自社のビジネスと状況を理解した弁護士からアドバイスが得られる
建設業には建設業特有の問題が、製造業には製造業特有の問題が、サービス業にはサービス業特有の問題が発生します。建設業では、施主と元請け、元請けと下請けとの間での代金の支払い、契約不適合責任等の問題が生じることが多く、製造業では、製造物責任の問題、契約不適合責任の問題、労働問題等が、頻繁に発生します。サービス業なら、顧客とのトラブル、従業員の労働問題ではないでしょうか。
また、同じ業種に属している会社であっても、会社によっては、取引先との取引を口頭の契約で済ませ、トラブルが発生した場合、対応に苦慮するところもあれば、基本契約、個別契約をしっかり結んで、法的リスクをしっかりと管理しているところもあります。
労働者との関係でも、正社員で安定しているところもあれば、非正規労働者ばかりで、トラブルの絶えない職場もあります。また、就業規則、残業の管理等がしっかり行われているところもあれば、こうした管理が出来ていないところもあります。
このように会社の属する業界、その業界のなかでの位置づけ、各社の特徴を踏まえて、自社のビジネスにとって、最も適切な法務面、ビジネス面からの解決を図っていくのが、顧問弁護士の役割です。
何か問題が発生した際に、自社に関するさまざまな知識を持った顧問弁護士が対応することで適切なアドバイスが得られるようになっているのです。
電話一本、メール一本でスピーディーなサポートが得られる
問題社員とトラブルになった、取引先と契約でもめたなど経営者はさまざまなトラブルに直面します。
その時に、中途半端な法律知識で初動対応すると、かえって問題を深刻化させ、解決までの時間を長くしてしまう可能性があります。
顧問弁護士がいれば、電話一本、メール一本で相談できますから、経営者は、適切な対応をしていくことが可能となるでしょう。
法務リスクの早期発見と対応ができる
法務リスクを事前に予防することを予防法務といいます。
会社の実務と現状を分析して、ここが法的に危なそうだから、こうした対応をしておいた方がいいとアドバイスをもらうことが、予防法務です。
例えば、定款が設立当初から変更されておらず、現行の会社法に従っていない場合の条文の修正、労働法の改正に伴う修正のなされていない就業規則の文言の変更、民法の改正に伴う取引先との契約書にある瑕疵担保責任の規定の修正等があげられます。
こうした予防法務は、法務の法律の専門家である弁護士のアドバイスを得ないと、なかなか進められないものです。
優先的な対応をしてもらえる
顧問弁護士と契約をしていれば、一見の顧客よりも優先して対応をしてもらえます。
顧問弁護士は、会社の状況をよく理解できているため、問い合わせの内容を理解するのに長い時間をかける必要はなく、短時間で処理することができるので、先に処理してしまおうと考えるからです。
何かトラブルが起きた時に、初動対応に遅れが生じるというのは経営にとって大きなリスクですので、優先的な対応をしてくれる顧問弁護士の存在は、企業経営の防衛力を高める一助になることは間違いありません。
顧問弁護士の選び方
顧問弁護士のメリットを把握できたところで、では適切な顧問弁護士の選び方についてご説明できればと思います。
自社のビジネスを理解してもらえる弁護士
自社のビジネスを理解している弁護士かどうか、ということが非常に大切です。
建設業、小売業、ITサービス、不動産など業界はさまざまある中で、業界ごとにどのような構造でどのような法令が適用されているのか、そして対象企業はその業界でどのようなポジションでどのようなビジネスを展開しているのか。このようなビジネスについて理解が、適切なアドバイスのためには必須だからです。
弁護士の中には、「離婚」「男女問題」「交通事故」などの個人案件を専門に扱う方もいるので、企業法務に経験や顧問弁護士としての実績が豊富にあることも重要です。
自社の業界に造詣が深い弁護士、契約関係、労働問題等に詳しい弁護士が、よりよいサービスを提供してくれると思います。
コミュニケーションの取りやすさ
弁護士の中にも、経営者と馬の合う人もいれば、経営者と馬が合わず、コミュニケーションが取りにくい人がいます。
また、法律用語ばかり使っていて、内容が理解しにくい人もいれば、会社の状況に合わせて、わかりやすい言葉で説明してくれる人もいます。
何名かに会ってみて、自社にとって、経営者にとって、コミュニケーションが取りやすい人を探すべきでしょう。
レスポンスの速さ
弁護士の中には、レスポンスの良い人もいれば、悪い人もいます。
携帯番号まで教えてくれる人もいれば、固定電話の番号しか教えてくれない人もいます。
また、ITに弱い人もいれば、SMSやスラック、チャットワークを使っている人もいます。
経営者の方は、タイムリーに弁護士の意見を聞きたいのですから、多くの連絡方法に対応できるとともに、レスポンスの早い弁護士を選ぶことをお勧めします。
まとめ
本記事は、顧問契約とスポット契約の違いを切り口に、顧問弁護士についての説明とそのメリットについてご説明しました。
多くの中小企業が顧問弁護士と契約していない現状において、そもそも契約をするべきなのかという疑問を抱えたままの経営者も多いことと思います。
しかし、発生した時には小さかった法律問題は、放っておくと、大きな法律問題に発展してしまいます。
できるだけ早く、顧問弁護士の意見を聞いて、適切な対応をしていくことが大切です。
そして、顧問弁護士を選ぶ時には、自社の業界に詳しい人、コミュニケーションの取りやすい人、レスポンスの早い人を選ぶとよいと思います。
当事務所では、多くの会社と顧問契約を結び、そのビジネスを理解した上で、迅速に適切なアドバイスを提供することをモットーとしています。
顧問弁護士を探している方は、ぜひ一度ご相談に来てください。
監修者
植田 統
1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。