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Ⅷ 取締役会の決議事項

取締役会とは、3人以上の取締役で構成された機関のことであり、主に会社の業務執行に関わる意思決定を執務としています。

取締役会は、公開会社、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社で設置が義務づけられており、取締役会を設置した場合は最低でも3ヵ月に1回は開催する必要があると定められています(会社法363条2項)。

では、そこでは、どのような決議が行われているのでしょうか。

Ⅰ 取締役会と株主総会の違い

株主総会もまた株式会社が会社に関する意思決定を行う機関ですが、取締役会との違いは、株主総会は規模にかかわらずすべての株式会社に設置が義務付けられていることです。

取締役会では経営に関する様々な事項について決議を行いますが、株主総会では会社の組織・運営・管理など基礎的な重要事項について決議を行う点が異なります。

Ⅱ 取締役会の決議事項

取締役会では、株主総会での決議が必要な内容を除き、会社に関する一切の事項について決めることができます。

その中でも取締役会で決議しないと執行できない内容が会社法で定められており、これを一般的に「取締役会決議事項」と呼んでいます(会社法362条4項)。

決議事項とされている内容については、個々の取締役に決定を委任することはできません。

取締役会は、大きく分けて、①業務執行の決定、②取締役の職務の執行の監督、③代表取締役の選定及び解職の権限を持っています。

業務執行の決定としては、重要な業務執行として、以下の7つの決議事項があり、これについては取締役会の決議を経て決定しなければなりません。
・重要な財産の処分及び譲受けに関する事項
・多額の借財に関する事項
・支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
・支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
・社債に関わる事項
・内部統制を確保するための事項
・定款の定めに基づく役員などの責任免除

取締役の職務の執行の監督は、代表取締役の職務の執行を監督していくことを指しています。しかしながら、日本企業では、取締役が業務執行の役割も担っているところから、業務執行の最高責任者である社長から職務の執行を監督されているという形になっています。

代表取締役の選定及び解職については、文字通り、代表取締役を選定と解職をすることであり、だからこそ、取締役会が代表取締役の職務の執行を監督するのです。選定、解職の手続については、別の記事で詳しく解説します。

Ⅲ 取締役会の決議事項と報告事項の違い

決議事項とは、各取締役だけで決定を判断できず取締役会の中で決議するべき事項を指します。この決議事項に加え、取締役会には報告事項という議題もあります。
取締役会における報告事項とは報告だけで足りる事項であり、主に取締役の職務の執行状況がこれにあたります。

Ⅳ 取締役会決議と要件について

取締役会では原則として、以下の要件を満たすことで決議が行われます。
・議決権を持つ取締役の過半数の出席
・出席した取締役の過半数の賛成
ただし取締役会で解職を求められている代表取締役など、「決議に特別の利害関係を有する取締役」は決議に参加できません。

なお、6名以上の取締役が参加しており、その中に社外取締役が1名以上いる場合は以下の決議事項について「特別取締役」のみによる決議も可能です。(会社法373条1項)
・重要な財産の処分及び譲受けに関する事項
・多額の借財に関する事項

Ⅴ 取締役会決議を省略できる場合

例外として、決議事項として提案された事項について、取締役全員が書面・電磁的記録で同意すればその事項を可決する旨の取締役会があったとみなすことができます。(会社法370条)
これを「書面決議」や「みなし決議」と呼び、あらかじめ定款で定めることにより取締役会での決議を省略できるものです。
ただし監査役がその当該事項について異議を唱えた場合、決議の省略はできません。

Ⅵ まとめ

取締役会では、決議事項と報告事項があります。決議事項は、どのようなものが対象となるのかを正確に理解しておく必要があります。オーナー企業等では、社長が取締役会を開かず、独断で重要な意思決定を行ってしまっているケースも多く注意が必要です。
会社のガバナンスを機能させるためには、取締役での決議事項と報告事項がどのようなものであるかを頭にいれ、それを議題に上げた上で、十分な議論をしていくことが大切です。
ガバナンスを強化したいと考えている会社の方は、是非青山東京法律事務所へご相談下さい。

監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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