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Ⅹ 任意売却の進め方

任意売却とは、住宅ローンのような借入金が返済できなくなった場合に、銀行等の担保権者の同意を得て、担保権が設定されている不動産を売却する手続のことをいいます。

債権者(裁判所)によって強制的に不動産が処分されるのが競売であるのに対し、任意売却は、所有者である債務者の任意の意思によって不動産を売却するものです。

1 なぜ任意売却をするのか

借入金を返済できなくなると、債権者から強制競売を申し立てられ、不動産が売却されてしまうことになります。しかし、強制競売では、落札される金額が低め(市場価格の7割と言われています)にとどまることが多く、不動産が売却されても、残債がたくさん残ってしまいます。

 

任意売却によれば、より高い金額での売却が可能となるので、残債がより小さくなります。また、任意売却では、親族や知人の購入者になってもらったり、あらかじめ第三者の購入者と交渉をしておくことで、売却後も一定のリース料を支払って、その不動産の居住することも可能となる場合がありますので、売却をする債務者にとってはメリットがあるのです。

2 任意売却には、債権者の同意が必要

担保目的物の購入者は、抵当権のついていない不動産を購入したいと考えています。なぜなら、抵当権がついていると、後日、抵当権を実行され、不動産が他の者に取得されてしまうからです。

 

そこで、あらかじめ抵当権者をはずすことについての債権者の同意を得ておいてから、任意売却する必要があるのです。

3 任意売却の基本的な流れ

(1) 債権者に対する任意売却の申し入れ

任意売却を成功させる上では、債権者との交渉がもっとも重要です。

 

債権者との話し合いで詰めなければならないことは、売却価格や売却額の配分だけでなく、競売の取り下げ、残債の返済方法、引っ越し費用を売却額から控除することへの同意等、かなり多岐にわたります。

(2) 次順位抵当権者との交渉

2番目以降の抵当権者がいる場合には、それらの担保権者とも同様の交渉をする必要があります。彼らの同意も得ておかないと、その抵当権が残ってしまうからです。

 

強制競売であれば、次順位担保権者には配当がまわることはほとんどありませんが、協力を得るためには、いくらかのハンコ代を支払う必要が生じます。

(3) 販売活動の実施(買い手の募集)

債権者が、すでに強制競売の申し立てをしているときには、競売の開札期日(申し立てから半年~9か月程度)の前までに競売を取り下げてもらえる状況を作らなければなりません。

 

ですので、できる限り早く買い手を見つけることが重要です。通常の不動産売却と同じように進めても、時間の制約があるため、希望の売値で売ることができず、値下げを強いられることがあります。

 

また、買い手に一定のリスク負担(現況引き渡し・公簿売買をお願いしなければならない場合には、やはり値下げを求められることもあります。

 

そこで、任意売却の場合、あらかじめ債務者が親族や知人と話をつけておき、買い手となってもらうことも多いようです。

(4) 売買契約締結・代金決済・抵当権の抹消・物件の引き渡し

通常の不動産売却では、契約の締結・代金の決済・物件の引き渡しは、それなりの期間をかけて手続きを進めていきますが、任意売却の場合には、競売手続きとの関係で処理を急がない場合が多く、これらの手続きをできるだけまとめて処理することが一般的です。

(5) 残債務の処理

売却代金で借入金を返済してもなお、残債が生じる場合には、その処理を行う必要があります。任意整理の要領にしたがって、債権者と交渉し、残債務を分割返済していくのが一般的です。

4 任意売却のリスク

任意売却は「成功が保証された売却方法」ではありませんから、当然失敗するリスクもあります。

(1)債権者との交渉に失敗する

最近では、債権者のなかには、任意売却よりも強制競売を希望する金融機関も増えてきています。

 

その理由は、2つあります。一つ目は、裁判所サイドも競売物件を高く落札してもらうためにさまざまな工夫を凝らしているため、物件によっては、競売で売却をしても十分な売却価格を確保できるケースも増えてきたこと、二つ目は、任意売却よりもオープンでフェアな手続きである競売を好む金融機関があることです。

 

任意売却を成功させるためには、金融機関が納得できるだけの販売計画を立てられるように十分な準備が必要です。

(2)買い手が見つからない

すでに述べたように、任意売却では、短い時間しか与えられていないことが多く、買い手を見つけることができないリスクが高まります。

 

また、地方都市など、地価が低落傾向にある地域では、与えられた時間内に債権者が納得できるだけの価格で買い取ってもらえる買い手を見つけられないということもあり得ます。

(3)悪質業者につかまってしまうリスク

任意売却は、ほとんどの人が初めての経験することなので、どの業者・専門家を選べばよいかわからないケースが多く、間違えて悪質な業者につかまってしまうリスクもあります。

 

インターネットで業者を探すような場合には、特に慎重に吟味する必要があるでしょう。

5 任意売却の相談は青山東京法律事務所へ

任意売却は、通常は売却することの難しい物件を、自分の意思(イニシアチブ)で売却できるようにするためのもので、債務者にとって多くのメリットがあります。

 

しかし、その一方で、4で述べたように、多くのリスクもあります。

 

任意売却は、任意整理の一貫として行うものなので、やはり弁護士に相談することが一番です。

 

青山東京法律事務所には、さまざまな債務整理の対応経験があり、対応ノウハウを持っていますので、どうぞお早めにご相談ください。

 

監修者

植田統

植田 統

1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。

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