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契約書・定款・就業規則-商品の売買契約書のチェックポイント

会社間で、原料や製品を仕入れる場合の契約は、商品の売買契約です。商取引においてきわめて頻繁に使用されているのが、この契約ということになります。基本的な条項は、以下のようなものです。各項目について、簡単にコメントを加えておきます。

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買主株式会社○○(以下「甲」という。)と売主株式会社○○(以下「乙」という。)とは、商品の売買に関し、以下のとおり売買契約を締結したので、本書面を2通作成し、甲乙が各1通ずつ保管することとする。

 

※売主、買主間で何度も取引をする場合には、売買基本契約を取り交わし、個別の商品の売買については個別売買契約を交わすという方法がとられていますが、ここで案内するのは、基本契約を取り交わさず、一回きりの商品売買契約を行う場合です。

 

 

第1条 (基本合意)

甲と乙とは、乙が甲に対し、別紙商品目録記載の○○と○○(以下併せて「本件商品」という。)を同目録記載の価格(消費税別)にて売り渡し、甲がこれを買い受けることを合意する。

 

※対象商品と価格については、よくよく確認してください。価格については、消費税込みか消費税別かもよく確認しましょう。

 

 

第2条 (引渡し)

乙は、甲に対し、次のとおりの引渡日及び引渡場所にて、本件商品を引き渡す。

(引渡日)

令和〇年〇月〇日  本件商品のうち別紙商品目録記載1ないし3の商品

令和〇年〇月〇日  本件商品のうち同目録記載4ないし6の商品

(引渡場所)

いずれも甲の本店所在地

2 甲又は乙が引渡日若しくは引渡場所の変更を申し出た場合には、その相手方の了承を得て、新たな引渡日若しくは新たな引渡場所に変更することができる。ただし、その変更により費用が増加した場合には、その増額部分は変更を申し出た者の負担とする。

 

※引渡日と場所も重要な要素ですので、しっかり確認しておきましょう。

 

第3条(代金の支払)

甲は、乙に対し、本件商品の売買代金を次のとおり分割して、⑴については、本契約締結の席上で支払い、⑵⑶については、乙の指定する乙名義の銀行口座(〇〇銀行○○支店 普通預金 口座番号〇〇〇)に振込送金して支払う。振込手数料は甲の負担とする。

⑴ 本契約締結日   金○○円

⑵ 令和〇年〇月〇日 金○○円

⑶ 令和〇年〇月〇日 金○○円

 

※代金の支払い条件は、売主、買主の資金繰り上、極めて重要です。ここでは振込金額ですから、当然消費税込みになっていることを確認して下さい。

 

 

第4条 (所有権移転時期等)

本件商品の所有権については、乙が甲に商品を引き渡した時にその商品について移転する。

2 本契約に基づき本件商品が引き渡された後の危険(滅失、毀損、盗難、紛失等)は甲において負担する。

 

※所有権が引渡によって移転し、その時に滅失、毀損、盗難等の危険が移転することを定めたものです。

 

 

第5条 (検査)

甲は、第2条所定の場所において本件商品の引渡しを受けたときは、引渡しを受けた後〇日以内にその商品の検査をする。

2 前項の検査において不良又は数量不足があったときは、甲は乙に対し、直ちにその旨を通知する。

3 前項の通知を受けた場合、乙は、甲に対し、乙の費用で、直ちに、第2条記載の場所にて、不良品の改修又は代替品若しくは不足分に相当する商品の引渡しをする。

 

※契約にこうした条項が定められていても、当事者の認識が甘く、検査が期間内におこなわれていないことが散見されます。特に、買主の方は、1項に定められた期間内に検査をしないと補修や追完を請求する権利を失ってしまいますので、要注意です。

 

 

第6条 (契約不適合責任)

甲は、本件商品の引渡しを受けた後、種類、品質又は数量について、直ちには発見することのできない本契約の内容に適合しない状態のあること(以下「契約不適合」という。)を発見したときは、乙に対し、速やかにその旨を通知する。

2 甲は、本件商品の引渡しを受けた後1年以内に契約不適合であることを発見したときは、乙に対し、乙の費用で、不良品の改修又は代替品若しくは不足数量分の引渡し、引渡し時を基準とした代金の減額及びこれを使用したことにより若しくは数量が不足したことにより生じた損害の賠償を請求することができる。乙が商品の契約不適合を知り又は重大な過失により知らなかった場合には、甲は、乙に対し、引渡しから1年を経過した後であっても、同様の請求をすることができる。

 

※商品が契約に不適合であるとき、補修、追完、代金減額、損害賠償が請求できることを定めた規定です。基本1年以内とされていますので、これも買主の方は要注意です。

 

 

第7条 (遅延損害金)

甲が第3条に定める売買代金の全部又は一部の支払をしなかったときは、甲は、乙に対し、支払をしなかった売買代金に対する弁済期の翌日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金を付加して支払う。

 

※支払いが遅れたときの利息を定める規定です。年14.6%と定められていることも多いですが、利息をいくらに設定するかは売主と買主のせめぎ合いで決まります。

 

第8条 (期限の利益の喪失)

甲について次のいずれかの事由が生じたときは、甲は、当然に期限の利益を失い、第3条の定めにかかわらず、乙に対し、直ちに本件商品代金残額を支払う。

⑴ 乙に対する債務の支払を怠ったとき

⑵ 乙以外の債権者に対する債務の支払を怠り又は約束手形若しくは小切手について不渡処分を受けたとき

⑶ 強制執行、担保権の実行としての競売等、保全処分、公租公課の滞納処分を受け、破産、特別清算、民事再生、会社更生その他の倒産手続の申立てがあったとき

⑷ 合併によらずに解散をしたとき

⑸ その他本契約条項に違反したとき

 

※期限の利益喪失とは、第3条1項で定められていた期限の利益を買主が失い、上記の事項が生じたときには、代金残額の全額について支払義務を負うということです。

 

第9条 (解除)

甲又は乙は、相手方について次の各号のいずれかに該当する事由が発生したときは、何らの通知催告をすることなく、本契約を解除することができる。この場合において、解除をした者は、相手方に対し、解除によって被った損害の賠償を請求することができる。

⑴ 本契約に定める債務の履行を怠ったとき

⑵ 強制執行、担保権の実行としての競売等、保全処分、公租公課の滞納処分を受け、破産、特別清算、民事再生、会社更生その他の倒産手続の申立てがあったとき

⑶ 合併によらずに解散をしたとき

⑷ その他本契約条項に違反したとき

 

※民法の規定によれば、解除をするには催告をして相当日数待ってから、初めて解除できるということになりますが、無催告で解除できる場合を定めた規定です。解除をすれば、契約が初めにさかのぼってなかったことになりますから、買主が別の取引先から商品を調達することが可能になります。解除をしないでいると、売主が後日商品を納入してきてしまいます。

 

第10条 (協議事項)

本契約の解釈に疑義を生じたとき及び本契約に定めのない事項については、甲及び乙は、互いに信義誠実の原則に基づき、協議の上で円満に解決することに努める。

 

※誠意をもって協議することを定めたものですが、実質的に意味はありません。

 

第11条 (管轄の合意)

本契約に関して生じた一切の紛争については、〇の本店所在地を管轄する○○地方裁判所をもって第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

 

※紛争が生じたときに、売主、買主のどちらの管轄地で裁判をやるのかを定めるものですが、売主と買主の本店所在地が遠隔である場合には重要です。どちらにとっても、自分の本店所在地を指定したいものです。

 

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最も簡単な商品の売買契約を見てきました。実際の取引にあたっては、付帯条件のようなものがついてきますので、もっと複雑な契約に出会うことが多いと思います。基本線は、上記に紹介した通りですので、じっくり条項を読み込み、理解していけば、対応できるはずです。

監修者

植田統

植田 統

1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。

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