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契約書・定款・就業規則-契約書のチェックポイント

「契約書をチェック」と言われても、何をどうチェックすれば良いのか分からない人が多いことと思いますので、契約書をチェックする上で特に重要な4つのポイントを押さえておきましょう。

 

ポイントの1は、ちゃんとサインがされているか、日付も記入されているかです。当たり前だと思われる方が多いと思いますが、片方の当事者から送られてきた契約書にサインし忘れているという場合が散見されます。また、個人間の契約であるのに、名前まで印刷してしまい、隣に三文判を押しただけという契約もありました。これでは、本人が押印したものであるのかどうかがわかりません。個人の場合には、名前は自署してもらい、押印もどこでも買える三文判ではなく、本人が作成した認印か実印で押してもらった方がいいでしょう。法人の場合も、会社で用意している社判と実印を押してもらうのが基本です。さらに、日付がブランクになっている契約書というのもよく見ますが、いつ成立したのかがわからなくなるので、ちゃんと日付も記入しておくようにしてください。

 

 

ポイント2は、文言が明確に書かれているかどうかです。

読んでも意味が分からないと、自分の専門知識の不足のせいかと思う方が多いようですが、そんなことはありません。読んでも意味のわからない契約書は、その契約書の作成者が悪いのです。意味が分かるように書き直させましょう。

 

意味がわからないまま押印してしまうと、後で問題が起きます。意味がよくわからないが、よく読み直してみると、相手方に一方的に有利な文言だったという場合もあります。

 

自分が作成した契約書ならこういう事態はないのですが、インターネットで書式を探してそれを流用した場合、相手方から提示されてきた契約書であったような場合には、こうしたことが度々おきます。

 

相手方が提示してきた契約書なら、その相手方に問い合わせを行いましょう。その答えを聞いて、意味がわかるまでしつこく聞き続けましょう。自分がサインするのは、その意味に納得がいったときだけです。あやふやなままサインしてしまわないように気をつけましょう。

 

 

ポイント3は、契約の対象、金額、納期などの内容が明確に定められているかどうかです。

まずは、契約の対象が何かです。売買契約なら、売買する対象が明確なので、あまり心配ありませんが、業務委託契約書の業務の内容は、あやふやな表現で書かれていることが多いので気を付けましょう。できるだけ明確にどういう業務を委託するのかを書いておくべきです。委託をする側はここまでやってもらえると思っていたが、委託を受けた側はその手前までが自分の仕事であると思っていたなどと言う場合がよく見られるからです。

 

次に、契約の対価が明確に定められているかです。どこまでやったらいくらもらえるのか、いつもらえるのかが、一義的に明確になっていなければなりません。納期も明確に定められているか、遅れた場合はどのような義務が発生するのかをチェックしておきましょう。

 

 

ポイント4は、相手が契約を守られなかった場合に、自分として何ができるかが明確に定められているかどうかです。

 

契約書に「相手方は自分に対して●●をしなければならない」などと書いてあるとしても、相手方が本当に「●●」をしてくれるとは限りません。相手方は契約後に、「原価が高騰したのだから、●●をしない方が得だ」などと考えるかもしれません。

 

こうした場合には、相手方以外の取引先から、自分は品物を仕入れることになるものと思いますが、今の契約が存続していると、相手方から後になって品物が届いてしまうかもしれません。こうした事態を避けるために、相手方との契約を解除しておかなければいけません。

 

民法の規定に従えば、相手方に履行の催告をしてから解除するという手続きになるのですが、相手方が約束通り履行してこないのですから、そんな手続きは飛ばしてしまいたいと考えるのが人情でしょう。そのためには、無催告解除ができるという条項を作っておくべきです。

 

また、自分が相手方の契約不履行により損害を受けた時には、民法の規定に従って損害賠償を請求していくことになります。その場合には、損害賠償を請求する側である自分が、損害額を立証していかなければなりません。そのためには様々な資料を集め、それが相手方の契約不履行とその損害の間に因果関係があることを立証しなければなりません。しかし、それには大変な労力を要します。証拠が不十分であると、損害が全部は認められなくなってしまいます。ですから、契約の不履行があった場合には、●●円の違約金を請求することができるとしておくべきです。

 

 

他にも、チェックしておくべき事項は多々ありますが、まずは、以上の4つのポイントを押さえておくことが必要です。

監修者

植田統

植田 統

1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。

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