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Ⅸ 就業規則のキーポイント
就業規則は、会社で労働者が働くルールを定めたものですので、本来会社側と労働者側がその内容を詳しく知っている必要があります。ところが、多くの会社では、それがないがしろにされており、人事部以外の人は、なんとなく就業規則の存在を知っているが、細かい規定は知らないというのが実情です。会社の労働条件がすべてここに定められていますので、その内容をよく理解しておきましょう。
目次
Ⅰ 就業規則とは
就業規則はそれぞれの会社の働くルールを定めたものであり、使用者が定める労働条件や職務上の規則に関する規則類です。就業規則本則だけを就業規則と呼ぶわけではありません。別に賃金規程、退職金規程、慶弔見舞金規程、国内旅費規程、海外旅費規程、育児休業規程、介護休業規程などを設けた場合は、これも含んで、就業規則と呼びます。また、正社員用、パートタイマー用、アルバイト用と就業規則が数種類作成される場合もあります。
多くの会社では、使用者も労働者も、就業規則の内容をよく理解していないという現状があります。しかし、最近よく相談をいただく問題社員の処分、精神疾患による休職者の取り扱い等、きわめてセンシティブな事柄では、就業規則にどのように規定されているか、処分を行ってしまった場合には、その規定に従って厳格に手続きが進められたのかが、ポイントになりますので、労使ともに就業規則の内容をもう一度よく確認しておくことが大切です。
Ⅱ 絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項、任意的記載事項
就業規則には、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と、ルールを定める場合には記載しなければならない「相対的必要記載事項」があります。加えて、使用者において任意に記載する事項があります。
【絶対的必要記載事項】
就業規則に必ず記載しなければならない事項です。
① 労働時間に関する事項始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
② 賃金に関する事項賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
③ 退職に関する事項(解雇を含む)
【相対的必要記載事項】
ルールを定める場合に就業規則に記載できる事項です。
① 退職手当に関する事項
② 臨時の賃金等及び最低賃金額に関する事項
③ 食費、作業用品その他の負担に関する事項
④ 安全衛生に関する事項
⑤ 職業訓練に関する事項
⑥ 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑦ 標章及び制裁の種類及び程度に関する事項
⑧ その他事業場の労働者の全てに適用される事項
【任意的記載事項】
法令で定めた記載事項ではなく、各企業で任意に定めることができる事項のことです。
Ⅲ 就業規則の作成と届け出
労働基準法は、労働者を1人でも使用する事業場に適用されますが、就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場において所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。違反した場合には、30万円以下の罰金が科されます。
就業規則は、会社単位ではなく、事業場単位で作成し届け出なければならないので、注意が必要です。
ただし、複数の事業場を有する企業で、本社の就業規則と同一の内容のものである場合などは、本社所在地を管轄する労働基準監督署長を経由して一括して届け出ることも可能となっています。
就業規則の作成から届け出までの流れは以下の通りです。
①就業規則案作成
② 過半数労働組合(または過半数代表者)からの意見聴取
労働者代表等からの意見聴取は、「意見を聞く」ことで足り、「同意」までは必要とされません。意見聴取の結果は、「意見書」として就業規則に合わせて提出されます。
ただし、就業規則を労働者にとって不利益に変更する場合には、労働者の代表の意見を十分に聴くとともに、変更の理由及び内容が合理的なものとなるよう慎重に検討することが必要です。
③ 所轄労働基準監督署長へ届け出
④ 事業所において周知する
Ⅳ 就業規則の周知徹底
「就業規則」は、労働者がいつでも見られるように職場の見やすい場所への掲示、備付け、あるいは共有のウェブサイトなどにアップロードするなど、労働者に周知しなければいけません。
Ⅴ 契約書・定款・就業規則についての相談は青山東京法律事務所へ
青山東京法律事務所では、多くの顧問先を抱え、日常的に契約書のチェックを行っています。業務委託契約、売買契約、請負契約、雇用契約等、様々な種類の契約を拝見しています。
多くの契約はスタンダードなものですが、特殊な覚書を作成したい、合意書を作成したいという依頼を受けて、その事例に適する契約を作成することもあります。
こうして青山東京法律事務所では、契約書チェック、契約書作成の経験を積み上げていますので、皆様のニーズが的確に対応できると思います。
契約書・定款・就業規則について悩まれた時は、是非青山東京法律事務所へご相談ください。
監修者
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植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士
東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。
野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。
米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。
2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。