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Ⅲ 業務委託契約が偽装請負とみなされないための注意点
業務委託契約は、おそらくどこの会社でも一番多い契約です。何かの業務を他人、他社に依頼して、やってもらうときに結ばれる契約です。下請会社に仕事を依頼する時にも、この業務委託契約が使われるのですが、実態は雇用ではないかと言われ、後で雇用契約だと認定される場合があります。これを偽装請負、偽装委託と言います。そうならないためにどうするべきかを見ていきましょう。
目次
Ⅰ 業務委託契約とは?
業務委託契約とは、業務の発注者(委託者)が、受注者である相手方(受託者)に対して何らかの業務を委託し、受注者は発注者から委託された業務を遂行し対価(報酬)を得るものです。
本来は、委託者と受託者は、それぞれ完全に独立している関係にあります。業務委託と言っておきながら、委託者が受託者にこまごまと指図するということがあってはいけないのです。ところが、実際には、受託者が委託者の会社の事務所で指図を受けながら、あたかもその会社の従業員であるかのように仕事をしているという場合が少なくありません。仕事が終わらないと帰れないのですが、残業をしても、業務委託だから残業代を支払ってもらえないという問題が生じています。
これは社会問題となっていて、偽装請負(委託)と呼ばれています。こうした問題になるのを避けるために、業務委託契約と請負契約、委任契約/準委任契約、雇用契約の違いを理解しておきましょう。
Ⅱ 請負契約とは?
業務を請け負った者、すなわち受託者が、委託された業務を完成させることを約束し、相手方である委託者はその仕事の結果(成果物)に対し、報酬を支払うことを約束する契約。受託者には契約内容に適合する成果物を納品する責任がある点で、次の委任契約/準委任契約と異なります。
Ⅲ 委任契約/準委任契約とは?
「業務」に対して報酬を支払う契約です。業務を受託した側は、独立性をもち、自己の裁量によって委託された業務を行うが、成果物の納入義務を負わない点で請負契約と異なります。尚、委任契約と準委任契約の違いは、委託する業務内容が法律行為かそうでないかによります。
委任契約は、法律行為に関する業務を委託する契約で、具体的には弁護士や司法書士との契約がこれにあたり、準委任契約は法律行為以外の業務を委託する契約で、例えば医師やITエンジニアによる知識や技能(治療)の提供やアドバイスを行うコンサルタントとの契約がこれにあたる。
また、業務委託契約と似て非なるものとして雇用契約がありますので、その違いを説明しておきましょう。
Ⅳ 雇用契約とは?
業務委託契約と雇用契約の違いは、独立関係にあるか、労働者として雇用主に対して従属関係にあるかにあります。つまり、業務委託契約は、契約当事者が主従関係ではなく、それぞれ独立した対等の立場にあるのに対し、雇用契約は、使用者と労働者という主従関係があるのです。労働者には労働基準法や労働契約法が適用されますが、業務委託先の場合、あくまで独立しているので、労働法は適用されません。
最近、ウーバーの社員が労働者か業務委託先かが問題となっていますが、それは、労働者であれば残業代が発生し、社会保険が適用され、会社に守られているのに対し、業務委託先になると、こうした保護がなくなってしまうからです。
業務委託の契約を締結したとしても、その運用面において作業や業務の実態が雇用状態にあるとみなされれば、雇用契約とみなされることになります(偽装請負・偽装委託の問題)。
Ⅴ 業務委託か偽装請負かの判断基準
その判断基準は、以下のような4つのポイントですので、簡単に紹介しておきます。
① 依頼される仕事や業務命令に対する拒否権があるか
業務委託契約では受託者に仕事や業務命令に対する拒否権があるが、雇用契約では事業者から指示のあった業務を拒否することはできません。
② 仕事において事業者の指揮命令を受けるかどうか
指揮命令とは労働者に対して業務の指示を行い、労働者の就労状況の管理を行うことです。業務委託契約では受託者は事業者からの指揮命令を受けませんが、雇用契約では事業者の指揮命令を受けます。
③ 仕事の遂行方法について事業者から直接指示を受けるかどうか
業務委託契約では仕事の遂行方法を受託者自らが決定しますが、雇用契約では事業者から直接指示を受けて仕事を行います。
④ 労働時間や作業場所が指定されているかどうか
業務委託契約では労働時間や作業場所は受託者自らが決定しますが、雇用契約において労働者は、事業者から指定された場所で指定された時間、仕事を行います。
仮に業務委託契約を交わしていたとしても、実質的に雇用契約のような作業指示を行っている場合、雇用契約があるものとみなされますので、要注意です。
つまり、以上の4点を意識していけば、偽装請負とみなされることはなくなるのです。
Ⅵ 契約書・定款・就業規則についての相談は青山東京法律事務所へ
青山東京法律事務所では、多くの顧問先を抱え、日常的に契約書のチェックを行っています。業務委託契約、売買契約、請負契約、雇用契約等、様々な種類の契約を拝見しています。
多くの契約はスタンダードなものですが、特殊な覚書を作成したい、合意書を作成したいという依頼を受けて、その事例に適する契約を作成することもあります。
こうして青山東京法律事務所では、契約書チェック、契約書作成の経験を積み上げていますので、皆様のニーズが的確に対応できると思います。
契約書について悩まれた時は、是非青山東京法律事務所へご相談ください。
監修者
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植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士
東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。
野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。
米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。
2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。