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Ⅹ 雇用契約書と労働条件通知書のキーポイント

社員が会社に入るときには、雇用契約書を交わします。会社から労働条件通知書を渡します。これが本来の姿ですが、中小企業では、これがちゃんと行われていないケールが見られます。後日、会社と労働者との間でトラブルが起きた場合に、その解決の基準となるのは、雇用契約書、労働条件通知書の内容ですから、かならず会社と労働者の間で取り交わすようにしておきましょう。

Ⅰ 雇用契約書

民法623条によれば、「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対して報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」ことになります。これを文章化したものが雇用契約書です。

必ずしも書面での締結は必要ありませんが、書面にて契約書を作成し、双方が署名・押印し、それぞれが保管しておくことが一般的です。

契約書として、双方が保管をすることで、契約が明らかになり、労働トラブルを未然に防ぐ効果を持ちます。トラブルになりやすい「労働者にとっての不利益変更」を行う場合などは双方が確認したことが記録に残るように雇用契約書を使うことになります。

Ⅱ 労働条件通知書

労働条件通知書とは、その名の通り、雇用者が労働者に対して労働条件を通知するための文章です。通知書ですので、双方の押印を必要としません。

労働法上、労働契約時に労働者に対して、明示すべき項目は労働基準法施行規則などに定められており、その明示事項をまとめたものが労働条件通知書です。

具体的には、以下の項目が定められます。

絶対的明示事項は、必ず記載しなければいけない内容です。具体的な内容は以下の通りです。

① 絶対的明示事項

・労働契約期間

・就業場所および従事する業務内容

・始業・終業時刻

・所定労働時間を超える労働の有無(残業の有無)

・休憩時間・休日・休暇に関する事項

・(交代制勤務が発生する場合)交代順序あるいは交代期日

・賃金(給与)の決定・計算・支払方法、賃金の締め切り・支払日に関する事項

・退職(解雇の事由を含む)・昇給に関する事項(昇給のみ、書面ではなく口頭による説明でも可)

② 相対的明示事項

相対的明示事項は、企業に該当する規定がある場合に、記載する必要がある内容です。

・退職手当の対象、決定、計算や支払いの方法および支払時期

・臨時に支払われる賃金、賞与、精勤手当、勤続手当、奨励加給等に関する事項

・労働者に負担させる食費や作業用品等に関する事項

・安全衛生や職業訓練に関する事項

・災害補償や業務外の傷病扶助に関する事項

・表彰や制裁に関する事項

・休職に関する事項

Ⅲ 雇用契約書、労働条件通知書の重要性

中小企業では、雇用契約書も労働条件通知書も交付していないケースが見られますが、労使のトラブルになると、どのような条件で雇用したのか、雇用されたのかが、トラブル解決の基準となります。ですから、雇用契約書は労使で必ず取り交わし、労働条件通知書は使用者がかならず作成し、労働者に交付しておくことが必要です。

Ⅳ 契約書・定款・就業規則についての相談は青山東京法律事務所へ

青山東京法律事務所では、多くの顧問先を抱え、日常的に契約書のチェックを行っています。業務委託契約、売買契約、請負契約、雇用契約等、様々な種類の契約を拝見しています。

多くの契約はスタンダードなものですが、特殊な覚書を作成したい、合意書を作成したいという依頼を受けて、その事例に適する契約を作成することもあります。

こうして青山東京法律事務所では、契約書チェック、契約書作成の経験を積み上げていますので、皆様のニーズが的確に対応できると思います。

契約書・定款・就業規則について悩まれた時は、是非青山東京法律事務所へご相談ください。

監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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