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事業承継・M&A-M&Aのデューデリジェンス(DD)

デューデリジェンスは、ある会社をM&Aしたり、ある会社に出資する場合に、その会社の価値などを確認するために行う手続です。M&Aや出資を行うことを考えている対象の会社が未開示にしている情報はないか、業務内容や資金調達に不正その他の問題はないかなど調べるものです。

デューデリジェンスは、発音しにくい言葉ですので、一般的にはDDと言われますが、その種類としては、ビジネスDD、財務DD、法務DD、人事DD、税務DD、IT DD、環境DD等があります。

Ⅰ 財務DD

財務DDでは、対象会社の決算の財務諸表などから業績の推移や収益性、資金繰り、資産などを調査します。対象会社が保有する土地建物や株式などの現在の市場価値、借入れや保証などの債務を調査します。

在庫の過大計上、循環取引等の粉飾決算がないかも見ていきます。さらに、将来の業績予想、業績悪化のリスクなど、対象企業の価値に影響のある要因を分析していきます。

中小企業の間にM&Aが広がってきたとはいえ、多くの場合、買収会社も対象会社も初めての経験であることが多く、せっかく公認会計士が作ってくれたレポートを読み飛ばしているケースが多々見られますが、これではいかません。

レポートが来たら、よく読み、特に不良在庫が積みあがっていないか、その他に粉飾決算の形跡はないのかをチェックしましょう。買収後にこんなはずではなかったと後悔することになりますので、財務DDの大切さを肝に銘じておいてください。

Ⅱ 法務DD

法務DDでは、対象会社の社内規程や組織関係書類、許認可関係書類、各種契約書、知的財産権の内容などを確認することにより、対象会社の経営が社内規定に則って適正に行われているか、対象会社の権利が保全されているか、第三者や従業員から損害賠償請求を受ける恐れがないかなどを確認していきます。 

取引先の企業から訴えられる可能性があったり、法令を無視した企業活動を行っている場合のほか、大きな負担や義務を伴う契約を締結していたりする場合、後にこれらの問題が発覚することで思わぬ不利益が生じる可能性も否定できないからです。

中小企業のM&Aの場合、最も気になる点は、株式の帰属です。名義株はないか、その後の譲渡は法律の規定に従って、適正に行われているのか、その結果としての現在の株主構成が正しいのか。M&Aを成立させるためには、株式が譲渡されなければならないので、まずはこの点が重要です。

次に重要なのは、次の人事DDとも関係しますが、残業代です。M&Aによりオーナーが変わる、社長が変わる、これに伴って辞める人もでき来る。そうなると、辞めた人は、M&A後の会社には何の義理も感じていませんから、残業代の未払いがあれば請求してきます。ですから、過去3年のタイムカードは細かくチェックしておくべきです。

なかなかとっつきにくい法務DDですが、当事者となった方は、何とかくらいついて法務DDレポートを理解しておきましょう。

Ⅲ 人事DD

人事DDでは、従業員の給与・待遇等や労働環境、人事評価の仕組みなど人事制度の運用等を調査していきます。労働法令の違反はないか、セクハラ・パワハラ等の違法行為がないかも見ていきます。法務DDと密接に関連しているところです。従業員は会社の資産ですから、従業員のモラルの高さ、各部署のキーパーソンが誰であるか、その退職リスクはないかなども分析していくことになります。

法務DDのところでも述べましたが、一番重要なのは残業代請求です。残業代未払いがないかどうかをよくチェックしておきましょう。

もう一つ重要なのは、以前から対象会社に勤務していた社員の使い方をよく考えることです。買収会社から人を送り込むのはいいのですが、大体それは既存の社員にネガティブなインパクトを与えます。退職する人が増え、残っている人もモチベーションが低下します。中には、会社の金に手をつけたりする人も出てきます。

Ⅳ 税務DD

税務DDでは、対象会社が法人税や消費税の納税その他の処理を適切に行っているかどうかなどを確認し、納税処理の申告漏れや誤りがないかを調査していきます。万が一、後に納税の申告漏れや脱税が発覚してしまった場合、後から追徴課税等が課される可能性もあるので、見落とすことのできないものです。

Ⅴ IT DD

IT DDでは、業務処理のシステムや顧客・財務会計の管理システムなど、経営に大きな影響がある情報システムの問題点及びその影響を調査していきます。金融業など、ITがビジネスを直接支えているような業態の場合には、特に重要です。

Ⅵ DDの手続、タイミング、費用

DDの手続きは、一般的に、①専門家への手続きの依頼、②調査範囲の確認、③対象会社への資料開示の要請、④対象会社へのインタビューとQ&A、⑤調査結果の報告書作成という順番で進んでいきます。

実施するタイミングは、取引成立の可能性が高まった、対象会社と基本合意契約書を結んだ後に行うことになります。

必要になる期間は、対象会社の規模や業務の複雑さ、調査の範囲・深度などによって変わりますが、概ね1~2ヶ月程度かかります。

DDの費用も、対象会社の規模や業務の複雑さのほか、調査の範囲・深度・報告書の記載方法などによって変わりますが、中小企業が対象会社のM&Aなら数百万円程度、大企業が対象会社なら数千万円になるものと思われます。

Ⅶ どのDDを行うか

中小企業のM&Aとなると、費用対効果の問題がありますので、どのDDを行うか、どの範囲で行うかを慎重に判断する必要があります。

一般的には、財務DDは必須、税務DDも財務DDと一緒に実施、予算に余裕がある場合なら法務DDも行い、人事DDは法務DDの中で一緒にやってもらうというところではないでしょうか。IT DDについては、必要性あると判断した場合にやってもらえばよいと思います。

VIII 事業承継・M&Aのご相談は青山東京法律事務所へ

青山東京法律事務所では、顧問先のクライアントから事業承継やM&Aについて多数の相談を受けています。

クライアントの皆さんにとっては、事業承継もM&Aも初めての経験ですので、全体像を理解していただくところから始め、その具体的方法論や各方法のメリット・デメリットについても、丁寧にご説明させていただいています。

事業承継、M&Aは、経営戦略そのものですので、代表の植田弁護士の持つ経営コンサルタントとしての経験に基づくアドバイスも高く評価されています。

事業承継、M&Aを考えている方は、是非青山東京法律事務所へご相談ください。

監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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