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Ⅲ M&Aデューデリジェンス(DD)の進め方
デューデリジェンスとは、英語ではDue Diligenceと書き、その意味は「適正評価手続き」となります。
金融では、投資家が投資を行う際や金融機関が引受業務を行う際に、投資対象のリスクとリターンを適切に判断するための調査のことを指しています。
目次
Ⅰ デューデリジェンスを行うケース
欧米では、企業を買収したり不動産を購入したりする際に、購入者側の負担で対象の企業や物件の状態の調査、つまりデューデリジェンスを実施することが一般的に行われています。
売却側から提示された情報は、客観性や信頼性に欠けているので、購入者側で調査を行うのです。売却後に大きなリスクが顕在化するのを避けるために行われるのです。
日本の中小企業のM&Aでも、対象企業に関するデューデリジェンスが実施されています。
Ⅱ デューデリジェンスの内容
デューデリジェンスは、M&A対象の企業や事業が買収に値する企業であるかどうかを判断するために行われます。その種類は、主に次の5点です。
① ビジネスデューデリジェンス
② 財務デューデリジェンス
③ 法務デューデリジェンス
④ 人事デューデリジェンス
⑤ ITデューデリジェンス
① ビジネスデューデリジェンス
ビジネスモデルや市場・競合・収益性・事業計画などを分析して、買収に見合う企業・事業かどうかを判断します。
② 財務デューデリジェンス
対象会社から提供された財務情報に基づいて、買主側が売主側の財務状況を評価し、買収に伴うリスクを特定します。将来の事業計画の基礎となる損益およびキャッシュ・フローの予測も行います。
中小企業では、決算書が実態と大きくかけ離れている場合があるので、財務デューデリジェンスの重要性は高いといえます。
③ 法務デューデリジェンス
買収する企業の株式関係や社内組織の現状、関連企業、資産などの調査のことを指します。
取引実行の上で障害となったり、対象企業の価値の評価や経営判断に影響を及ぼしたりする可能性のある法律上の問題点を見つけるために実施します。
④ 人事デューデリジェンス
組織や人材についての調査です。具体的には、現状の組織・人員構成・給与体系・退職金債務・年金債務・キーマンの存在・労使紛争の有無等を把握します。
⑤ ITデューデリジェンス
ITシステム運用やIT資産、IT戦略などを調査します。システム関連の資産査定や、M&A成立後の買主側へのシステム統合に関する障害のリスク、投資費用について予測するための調査を行います。
Ⅲ デューデリジェンスの実施方法
デューデリジェンスは、基本的に以下のようなフローで行います。
① 資料の確認・分析
② 現地確認
③ 聞き取り調査
④ 調査結果を踏まえた対応
調査結果が出たら、デューデリジェンスの最終結果を報告書にまとめ、経営に報告し、経営は、M&Aを進めるか中止するかについて、最終的な経営判断を行うことになります。
Ⅳ デューデリジェンスを適正に行うポイント
デューデリジェンスを適正に行うためには、どのように進めればよいでしょうか。
① M&Aの規模や内容を考慮して適正な範囲で実施する
② 自社の各部門の担当者だけで実施しない
③ タイミングを見極めて行う
④ 優先順位をつけて計画的に進める
⑤ 徹底した情報管理を行う
デューデリジェンスは重要な手続きですが、費用と時間がかかります。ですから、あらかじめ対象事業の強みと弱み・資産・負債・実態の収益力を把握し、対象範囲を絞り込んでから行うことが望ましいと思われます。
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監修者
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植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士
東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。
野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。
米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。
2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。