通常通りビジネスを行っていても、顧客や取引先とトラブルが生じることがあります。個人の方も、普通に日々の暮らしを送っていても、交通事故の加害者や被害者になったり、相続争いに巻き込まれたりすることがあります。まずは、当事者間で話し合いをして解決しようとするのですが、対立が深刻になると、訴訟や紛争に発展します。それぞれの段階に応じて、弁護士の使い方、弁護士にやってもらうことも変わってきます。

①訴訟・紛争その1:当事者間でもめている場合
②訴訟・紛争その2:当事者間の話合が決裂し、訴訟・審判・調停を起こす場合
③訴訟・紛争その3:訴訟・審判・調停を起こされてしまった場合
④訴訟・紛争その4:訴訟・審判・調停にかかる時間
⑤訴訟・紛争その5:訴訟・審判・調停にかかる費用
⑥訴訟・紛争その6:仮差押え
⑦訴訟・紛争その7:本人訴訟と弁護士への依頼

①訴訟・紛争その1:当事者間でもめている場合

当事者間の話合で決着がつけばよいのですが、関係がこじれてお互いに主張を譲らないという場合には、弁護士に依頼することになります。依頼を受けた弁護士は、クライアントからお話を伺い、それを法律的見地から分析し、クライアントの主張が通りそうなのかどうか、紛争の見立てを提示します。こちらの主張が通りそうだということになれば、それを文書に書き、内容証明郵便として発送します。

内容証明郵便の末尾には、「2週間以内に返答してください。」等の文言を入れますので、相手方から返事が来ると、交渉が始まることになります。相手方が弁護士をつけてくる場合、本人が相手となる場合がありますが、双方で交渉を行い、落としどころが見つかれば、和解契約を交わすことになります。

②訴訟・紛争その2:当事者間の話合が決裂し、訴訟・審判・調停を起こす場合

交渉がまとまらなかった場合、どうしてもこちらの主張を通したいということになれば、訴訟を起こすしか方法はありません。140万円以下の金銭支払いの請求であれば簡易裁判所に提訴することになりますが、それ以上の金額になりますと、地方裁判所に提起することになります。

労働事件や家事事件ですと、訴訟を提起する前に、審判や調停を経なければならない場合があります。労働事件なら、いきなり訴訟ではなく、まず労働審判を経ることになり、遺産分割は、遺産分割調停を経ることになります。労働審判では、双方が和解すれば、その内容が審判となりますが、双方の主張の歩み寄りがない場合には、労働審判委員会の審判が出されることになります。遺産分割事件では、調停前置が義務づけられているので、まず遺産分割調停を起こし、双方の歩みよりがなく、和解がまとまらなかった場合に、調停委員が結論を出すということはなく、訴訟に移行することになります。

③訴訟・紛争その3:訴訟・審判・調停を起こされてしまった場合

調停の場合なら、期日に出頭しなくても、そのまま調停が不調に終わるだけなのですが、労働審判等の場合には、欠席をすると、相手方の主張を労働審判委員会がそのまま聞き入れて、相手方有利な審判を出してしまう場合がありますので、要注意です。訴訟の場合には、初回期日に出頭せず、何の書面も出さないでいると、訴状に書かれている内容を争う意思がないものとみなされて、訴状に書かれた通りの判決が出てしまいます。従って、訴訟・審判を起こされたら、迅速に弁護士に依頼し、反論をしてもらうことが必要です。調停の場合にも、欠席により過料の制裁を受ける場合がありますし、また、将来訴訟に移行した場合に備えて、申立ての内容をよく吟味しておく必要があるので、弁護士に相談することをお勧めします

④訴訟・紛争その4:訴訟・審判・調停にかかる時間

労働審判では、原則3回の期日で終了することとなっているため、3~6か月程度の期間で終了しますが、遺産分割調停では、こうした回数制限のようなものがなく、双方の歩み寄りへのやり取りが何度も行われる場合もあり、1年程度の期間がかかってしまいます。訴訟については、原告と被告双方が自己の主張を展開し、それを証明するための証拠を提出することになりますが、争点となっているポイントについては、証人尋問が行われることになるため、1年を超える期間がかかるのが通常です。最も、訴訟においても、双方の主張が2,3回繰り返され争点が明らかとなった時点で、裁判所が和解を進めてくることも多く、そこで双方が歩みよれば、和解が成立しますので、1年以下の期間で終わることもあります。

⑤訴訟・紛争その5:訴訟・審判・調停にかかる費用

訴訟・審判・調停を起こす場合も起こされてしまった場合も、弁護士に頼むに当たって心配なのは費用です。2004年3月までは、弁護士会の報酬基準というものがありましたが、今では、これは廃止され、各弁護士が自分で報酬基準を設定してもよいことになっているのですが、現実には多くの弁護士事務所が、廃止前の弁護士会報酬基準を今でも採用しています。因みに、訴訟の場合の報酬基準は以下のようなものです。

経済的利益の額着手金報酬金
300万円以下8%16%
300万円以上1,000万円未満5% + 9万円10% + 18万円
1,000万円以上3億円未満3% + 39万円6% + 58万円
3億円以上2% + 339万円4% + 658万円

経済的利益の額とは、着手金について、訴訟の請求額(訴額といいます)がこれに当たります。報酬金は、訴訟を起こした方ならいくら勝訴したか、起こされた側なら訴訟を当初の請求額からいくら減額されたかが、その算定の基礎となり、これに上記の比率をかけて出します。

当事務所でもこれと同じテーブルを用いているので、そこから出てきた金額がベースになりますが、実際には案件の難易度、クライアントの財務状況等を総合的に判断して決定しています。フレキシブルな対応を心がけていますので、訴訟・審判・調停を準備している方は、是非一度ご相談ください。

⑥訴訟・紛争その6:仮差押え

相手方に貸付金の返済、損害賠償請求等の金銭請求のため訴訟を提起しても、訴訟には1年程度の時間を要することから、その間にお金が無くなってしまう恐れがあります。そのような事態を避けるために、今の時点で相手方の財産を仮に差し押さえる制度が仮差押えです。

裁判所の審尋という手続きを経て、請求に理由があると認められれば、発令されます。仮差押えをする対象は、不動産、預貯金、売掛金等の金銭債権がありますが、相手方の生活やビジネスへの悪影響を避けるため、まず不動産からという原則があります。

⑦訴訟・紛争その7:本人訴訟と弁護士への依頼

訴訟・審判・調停を行う場合、本人訴訟といって、弁護士に依頼せず、自分で進める方法があります。しかし、裁判には弁護士でないとわからない色々な手続き、取り決めがありますので、簡単な案件でない限り、弁護士に依頼されることをお勧めします。気になるのは費用面だと思いますが、当事務所では、事務所報酬規程はありますが、クライアントの状況、案件の難易に合わせて、ある程度フレキシブルに着手金・報酬金額を決めていますので、いずれにしても一度相談されることをお勧めします。