東芝の粉飾決算事件、オリンパスの粉飾決算事件、電通の過労死事件、フジテレビ問題を見ればわかるように、企業統治・ガバナンスの機能不全は、企業イメージの悪化、業績の急落、社員のモラル低下を招き、企業経営に大きな影響を与えます。
本来、経営トップが迅速かつ適切な対応をとり問題を収拾するべきですが、実際には、経営トップが「たいした問題ではない。しばらくすれば、ほとぼりが冷める」と考え何もアクションを起こさないことが、問題の拡大を招いています。
企業統治・ガバナンスの問題を未然に防ぐためには、適切な企業統治構造を採用し、そこに適切な人材を配備し、さらに適切な組織運用を行っていくことが必須です。
以下では、そのキーポイントを簡単に紹介します。詳しくは関連記事をお読みください。
目次
Ⅰ 企業統治・コーポレート・ガバナンスとは
コーポレートガバナンス・コードの定義は以下のようになっています。
「本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。企業は株主に最大限の利益を還元しつつ、自らの価値を向上させなければなりません。そのためには、株主をはじめとした様々なステークホルダー(関係者)の利害を踏まえ、企業を適切に運営・発展させる仕組みが必要になります。その仕組みが、コーポレートガバナンスなのです。」
つまり、コーポレートガバナンスとは、株主利益を守る仕組みであるということをしっかりと頭の中にたたき込んでおきましょう。
詳しくは、企業統治・コーポレート・ガバナンスとはをご覧ください。
Ⅱ 企業統治の3類型
会社法上の企業統治の枠組みとしては、基本的に3つあります。皆さんがお勤めの企業でも、どれかの枠組みを採用しているはずですので、どれに当たるかを理解しておきましょう。
1 取締役会設置会社
取締役会-監査役会が設置された会社です。商法時代からある仕組みで、公開会社(株式を自由に譲渡できる会社のこと)の多くは、この仕組みを採用しています。取締役は3名以上、その3名以上の取締役が集まって取締役会を構成します。これとは別に、監査役がいて、彼らが監査役会を構成しています。監査役は、業務の意思決定と取締役の業務執行を監督するという役割を担っています。
2 監査等委員会設置会社
監査等委員会設置会社を採用する企業では、取締役会のほかに監査等委員会が設置されます。監査等委員会のメンバーは取締役ですが、取締役の中から監査等委員の選任手続きは別途行われます。彼らは、業務の意思決定と取締役の業務執行を監査するというものですので、監査役会とほぼ同じです。ただし、監査等委員会は3名以上の取締役で構成され、その過半数が社外取締役でなければならないこととなっています。監査等委員兼務取締役は任期が2年、それ以外の取締役の任期は1年となっており、監査等委員兼務取締役は、それ以外の取締役の選任について意見を述べることができるとされています。
3 指名委員会等設置会社
指名委員会等設置会社は、取締役会から業務執行権を切り離し、執行権は執行役と呼ばれる執行機関を委任することとし、取締役会は監督機関として位置づけたものです。指名委員会、報酬委員会、監査委員会の3つが置かれることとなっており、各委員会のメンバーの過半数は社外取締役でないといけないという厳しいものです。
詳しくは、企業統治の3類型をご覧ください。
Ⅲ 持ち株会社によるグループ統治
持ち株会社とは、子会社の株式を保有し(多くの場合100%保有しています)、グループ全体の経営戦略や事業計画などに携わる会社のことです。
持ち株会社には、グループ企業の指揮監督のみを目的に設立されるため、自らは生産活動や事業を行わず、子会社からの配当金が売上となる「純粋持ち株会社」と株式を保有して子会社を指揮する一方で、持ち株会社自体も事業活動を行う「事業持ち株会社」の2種類があります。
三菱UFJフィナンシャル・グループとセブンアイホールディングスは、「純粋持ち株会社」の例であり、トヨタ自動車は、「事業持ち株会社」の例となっています。
皆様のお勤めの会社では、持ち株会社を採用していないかも知れません。採用している会社の方は、持ち株会社の機能と事業会社の機能を理解しておきましょう。
詳しくは、持ち株会社によるグループ統治をご覧ください。
Ⅳ 社外取締役を設置する意味
社外取締役は,取締役として会社の経営を担いながら,社外の人間として経営陣から独立して会社の意思決定や取締役の業務執行を監督する役割を担っています。
具体的には,①自らの専門的な知見に基づき,会社の持続的な成長を促すとともに,中長期的に企業価値を向上できるように,経営方針等について助言を行うという役割,②経営陣の選任解任について意見を述べるとともに,取締役会の重要な意思決定に関与して経営を監督するという役割,③会社と経営陣や支配株主等との利益相反を監督するという役割,④経営陣・支配株主から独立した立場で,少数株主をはじめとする株主の意見を取締役会に適切に反映させるという役割です。
多くの会社で社外取締役が導入されていますが、社外取締役が上記のような機能を果たしているかについては、疑問があります。もし、皆様の会社に社外取締役がいるようであれば、その機能強化を考えていきましょう。
詳しくは、社外取締役を設置する意味をご覧ください。
Ⅴ 取締役と執行役員の役割の違い
最近多くの会社で執行役員が置かれるようになっていますが、その役割、権限、組織上の位置づけ等を正確に理解されていないのが現状です。
多くの会社では、取締役と執行役員は、ほぼ同じものと理解されています。総称として、役員という言葉が使われ、名前こそ違うが、同じものだと理解されているのではないでしょうか。
しかし、本来、取締役は経営の意思決定を行う者、執行役員はその意思決定の下に業務執行をになう者です。取締役は、執行役員が業務執行を適切に行っているかを監督する立場にもあります。
執行役員制度を導入している企業でも、取締役と執行役員との役割の違いが明確に認識されていない場合が多いので、ガバナンスを強化するために、もう一度、両者の違いを再度確認してください。
詳しくは、取締役と執行役員の違いをご覧ください。
Ⅵ 代表取締役の権限
代表取締役は会社を代表し、会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有しています。これは、代表取締役が対外的な関係において会社を代表し、かつ、その範囲が会社の業務のすべてに及ぶことを意味します。
代表取締役は、通常社長でもあり、その権限は強大です。その上、日本企業の多くでは、新任取締役を代表取締役社長が指名する、次の代表取締役社長を現在の代表取締役社長が指名するということが行われ、取締役会は、代表取締役社長の支配下に置かれています。
こうした構造の中で、ガバナンスを機能させることは困難ですので、最近は取締役会に指名委員会を設け、代表取締役の指名権に歯止めをかける動きが出てきています。
詳しくは、代表取締役の権限をご覧ください。
Ⅶ 青山東京法律事務所の経験
企業統治・ガバナンス・コンプライアンスは、企業経営の根幹であり、どの企業もここを強化することなくしては、芯の通ったしっかりとした経営を行っていくことはできません。
代表の植田弁護士は、現在上場企業も含め、いくつかの監査役等を務め、日夜、企業統治・ガバナンスの問題に直面しています。また、弁護士として、役員・社員の法令違反の問題の解決に当たることも多く、コンプライアンスの問題を取り扱っています。
企業統治・ガバナンス・コンプライアンスの問題で悩みをお持ちの企業の方は、是非青山東京法律事務所へご相談下さい。